「新型インフルエンザ」を総括する

神戸市長のひとまず安心宣言でようやくインフルエンザ騒動も終熄に向かいそうだ。ネット上では相変わらず「新型インフルエンザ=陰謀」論が出ているが、なかには責任を負った政府の要人にそうした世迷い事を言う方がいるから困る。最近では「エイズの原因はHIVではない」といい、抗HIV薬の普及を妨げた南アフリカの例もあり、笑ってばかりもいられない。
一連の騒動からはやはり日本政府の危機管理能力のなさと、パニックを醸成するマスコミのセンセーショナリズムが明らかになった。
今回のインフルエンザは「新型」とは言うが、世界の専門家が準備し、対策を練ってきた鳥インフルエンザ由来の毒性の強い新型インフルエンザではない。私は当初真打ちが登場する前の予行演習でいいのではないかと思っていたが、厚労省官僚の過剰反応で世間があらぬ方向に動いてしまった。
メキシコに限定されていた患者が周辺国でも確認されたとき、厚労省がとったのは水際作戦。これはあくまでも国内に流行が及んでいないという前提で行われるものだ。この前提がおかしい、間が抜けていると私は思った。しかも空港に出てきた厚労省の職員が着てきたのが、エボラ出血熱SAASかと思うような防護服。対象となる病原体の毒性に対して全く意味のないことに税金が使われてきたことを、マスコミがきちんと指摘すべきだったが、逆に厚労省の情報操作を増幅させたのがマスコミだった。関西で患者が確認されたニュースを病院前で伝えたレポーターが、当然とでも言うようにマスクをしていたのを私は暗い気持ちでみた。揚句に起こったのが患者たたき。ようやく最近になってインフルエンザ流行時にマスクに感染防御の効果がないことを実証するテレビ番組も出てきたが、昔々のエイズパニックを経験するものとして、20年以上たって何も変わっていないことに暗澹たる思いがする。

こう書いた直後メモリアル・キルト・ジャパンから会報が届いた。そこにはこう書いてあった。

「九州薬害HIV訴訟」原告団は21日、新型インフルエンザを巡る行政の対応や報道について「エイズパニックを思い起こさざるをえない」として、感染力や毒性を正しく評価した冷静な対応を求める緊急アピールを厚生労働省や報道機関に送付した
まさに我が意を得たりと言うところだ。