タミフル問題を考える

インフルエンザ治療薬であるタミフルという薬を飲んだ患者に異常行動が起きるという話が起きている。
私が理解する限り、大まかな流れはこうだ。インフルエンザにかかった人から意識障害などの症状を起こす人がいるという報告が日本で多発した。これをインフルエンザ脳症といい、少ないながら海外での報告例もあり、インフルエンザに伴う重大な合併症だということが認知された。
これを薬害だと言い始めたのはおそらく近藤誠氏。当初はインフルエンザの小児に使用すべきでないことがわかっているアスピリンなどの一部の解熱剤が原因だといい、「インフルエンザ脳症は(アスピリンやポンタールなどによって引き起こされた)ライ症候群だ」といっていた。しかしそもそも「インフルエンザ脳症」と「ライ症候群」は、前者が脳障害が主であり後者は意識障害だけでなく肝臓や膵臓などの障害を伴う全身病であることなど、まったく症状が異なる。近藤氏のキャンペーンは、インフルエンザなどにむやみに使われていたアスピリンなどの処方を制限する社会的な効果はあったとしても、出発点が間違っていたために、非科学的で意図的な「悪玉」捜しの連鎖を生んだ。次にやり玉に挙げられたのが、小児でもっとも安全性が高いということが確認されているアセトアミノフェンという解熱剤だ。ここに「そもそも風邪に解熱剤は使うべきでない」という立場の人達が加わって話がややこしくなってきた。しかし日本以外の国でインフルエンザの患者にアセトアミノフェンを処方しないという話は聞いたことがない。
最後にたどり着いたのがタミフルということになる。さてと。汗汗。
ここで私などはわからなくなってくる。「ライ症候群」といい、「インフルエンザ脳症」といい「タミフル脳症」という。 これは一つ一つどう違ってどこが重なっているのか。アスピリンアセトアミノフェンは解熱剤という共通点はある。しかしタミフルは抗ウイルス薬だ。全然別の働きをする薬が、まったく同じ副作用をおこすととは、ないとはいえないが、きわめて考えにくい。また浜六郎氏のタミフル原因説も非論理的で信じるに足らない(ここからたどることが出来る)。
結論。インフルエンザは高齢者や心臓病、肝臓病などの病気を持っている人がかかると死に至る病だ。一部の無責任な医者が信じさせたがっているような<ただの風邪>ではない。しかし元気な子どもや健康な成人にとっては、仕事や学校は休まなければいけないが、自然に治る病気でもある。インフルエンザと診断したらすべてタミフルを飲ませるべきだとはいえないが、タミフルの恐怖をあおり立てるような態度もつつしむべきだと思う。すべての薬は危険性と効果の天秤をかけて個々に判断するのがあたりまえ。両極端な話はいただけない。