外れものになるとも、はぐれものにならない

昨日金子光晴絶望の精神史を読んだ。戦時中反戦反軍を貫き、戦後は浅薄な民主主義擁護者にならなかった詩人の自叙伝だ。大政翼賛会の文学版である日本文学報国会に転向した左翼文学者が雪崩を打って参加していった(壺井栄中野重治など)のを尻目に、一貫して非協力を貫いた。息子の徴兵を忌避するために無理矢理喘息発作を引き起こして診断書を手に入れた下りなどは、鬼気迫るものがある。報国会に非協力を貫いた文学者では、ほかに永井荷風などがいるが、荷風が「墨東綺譚」などを表して現実から遠ざかっていったのとは対象的に、戰争の現実に常に気を配っていたことは特記されていい。オペラの歌ではないが

風の中の羽のようにいつも変わる
人の心を追いかけてはぐれものにならないで、流行から外れても自分の好きなように生きていたい。