忙しい(?)

先月はとうとう一度もブログを更新しなかった。理由は「忙しい」と言うことにつきるが、ようはその中身だ。
仕事はたしかに忙しい。一応私は週4日半働くことになっている。踵のことを忘れたように文字通り一日中走り回って、しかもその枠内で仕事が終わらないと、結局休みにも出て行くしかない。残業すればいいように思えるだろうが、時間外に病棟で仕事をするとその分夜勤の看護師の仕事を増やすことになり、できるだけ避けなければいけない。
問題は時間外で何をしているかだ。ここにきわめてばかばかしい状態に自分を追い込んだ私がいる。iPodの出始めに購入し家中のCDをすべて移し替えたところまではいいとして、最近ではPodcastingにずっぽりとはまりこんでしまった。このサービスを使えば、たいがいは無料で、いろんな番組がダウンロードできる。はじめは医学関連だけだったのが、だんだん科学一般や政治経済、果ては哲学ものや文学関係まで広がってしまった。しかも多くの番組が一月に一度とか、毎週、中には毎日更新されるものまであるので、通勤時間内では消化しきれない。
一番の間違いはitunes-Uといってアメリカの大学の教材らしい番組をダウンロードしたことだ。中身が19世紀の英米文学の朗読で、まずいことにこれがめっぽうおもしろい。今まで聞きとおしたのがコナンドイルの推理もの、H.G.ウェルズの「宇宙戦争」それから映画「ドラキュラ」の原作など。それでもまだ5日半以上残っている。
そういえば本もまだ買ったままなのが山とある。近頃読んだのは「戦前の少年犯罪」。少年犯罪が凶悪化しているというのは全くの俗説だとは知っていたが、それを昔の新聞記事の調査で立証しているもの。確かに労作とはいえるだろうが、読み返したくなるものではなかった。具体例としてあげられているものがあまりに凄惨だと言うこともあるが、著者が事件を取り扱う態度がどうにも軽すぎると私には思えたからだ。
たった今読んでいるのが「臨床心理学における科学と疑似科学」。昔、私は心理学というものをあまり信用してこなかった。一つには雑誌やマスコミで盛んに取り上げられるいわゆる「心理テスト」というものが眉唾物だと思っていたからだ。三つの絵から一つ選んだだけでその人間の性的欲求がわかるなどと主張する「学者」など、手相見と中身が変わらないと思えた、これは今でも変わらない。もう一つは、ずいぶん以前にある医学雑誌に載った記事。それには心理カウンセラーが精神分析をやっていく過程で誤った記憶を被験者に植え付けて、その人が親から性的虐待を受けたと思いこませ親を訴える事件が起きているというものだった。そんな私が精神科病院で働くことになって、全く心理学のことを知らないですませるわけにも行かないだろう。そんな動機だと言いながら入門書ではなくよりにもよってきわめて挑戦的・挑発的な本を選んだのは私らしいと自分でも思う。まだ読み始めたばかりだが、心理学全体が疑似科学ではないことや、臨床家と科学者の関係など知っておくべきことが多いもののようだ。その昔私が必死に、「買ってはいけない」や彼らが振りまいてきた「化学物質過敏症」などと言うエセ科学と戦ってきた過程で学んだことを、もう一度きちんと整理するきっかけにもなりそうだ。
それやこれやでなかなか更新できないようだ。もっとも孫と遊ぶのに忙しいからという噂もあるがこれは誤報だ。
全く話は変わるが、一昨日はキング牧師が暗殺されて40年だった。多くの番組が彼の貢献をたたえる特別番組をやっていた中で、あるテレビ局が彼がベトナム戦争に反対する演説をやっていたことを取り上げて、彼を「反米的」「反愛国的」と非難していた。オイオイ、あの戦争が正義の戦いだったなんて言うつもりなのかい。なんせ共和党大統領候補=マケイン上院議員の看板がベトナム戦争の戦時捕虜というのだから、どこの国も過去の清算は難しいと言うことなのだろうか。