自転車馬鹿、自転車をとったらただの馬鹿

9月29日から一泊で山口に職員旅行に行った。朝の九時から酒盛り状態で、夕方ホテルになだれ込んで大宴会というかなり昔の職場旅行のパターン。翌朝は完璧なマグロというか昼ぐらいまでものも考えられないひさびさの二日酔いだった。
さてしばらく足の痛みがなかったが、昨日朝から踵にいやな感覚があり、「またやってしまった」と思ったが、無理をしないようにして大事には至らなかった。しかし。こうちょっとしたことで痛みがぶり返してくると、危なくって当分自転車には乗れそうにない。自転車レースへの復帰は夢のまた夢か。
さて昨日はバスの中も静かだったので、本を読む時間がかなりあった。持って行ったのがジョージオーウェルの「Why I write」。1930年代から40年代に至るエッセイ集だ。一番おもしろかったのが「ライオンと一角獣」。初版が1940年というから第二次世界大戦の初頭に、当時ヒットラーの脅威に十分対抗できないイギリスを詳しく分析した政治的エッセイだ。
文庫版で80ページ以上の長文を簡単に要約することは無理だが、おおよそは次のようなことだ。まず当時のイギリスは中産階級が数を増し、労働階級でも全般的な生活水準が向上している。一方伝統的な支配階級は世襲制の上にあぐらをかいて支配能力を失っている。左派つまりは当時の労働党共産党は、反愛国主義、平和主義という立場をとっている。これは実質的にはファシズムと戦う姿勢ではない。
国際的にはヒットラーはきわめて効率的に戦争経済を構築し、強大な軍事力でヨ−ロッパを飲み込もうとしている。
ではどうするか、が作者の関心事だ。彼はイギリスが戦争を革命戦争に転化する必要があるという。間違っては困るがこれはレーニン流の革命戦争の意味ではない。彼は主要産業の国有化と所得格差の縮小により、より効率的な戦時経済体制を構築することを提唱している。彼は目先の金もうけばかりを考えるイギリス資本家が、ヒットラーの脅威が迫っているという時期に、ドイツに戦略物質を輸出したことを非難している。
学生時代からジョージオーウェルの本は読んできたが、彼の政治的立場をきちんと述べたものは読んだことがなかった。この本から私は、彼が第二次大戦後にヨ−ロッパで広がった社会民主主義に近い立場をとっていることを知った。
ジョージオーウェルのプランはもちろんそのままでは実現しなかった。大きくはヒットラーの対ロシア戦争が敗北に終わり、またアメリカが参戦することでイギリスが空爆以上の深刻な脅威にさらされることがなかったことがあげられるだろう。しかし植民地政策の変更や社会保障政策の充実は戦争の影響を抜きにしては考えられないだろう。(続く)