ブラックマンデーの教訓

私が聴いているポッドキャスティング伊藤洋一のビジネストレンドというものがある。この人は「住信基礎研究所主席研究員」という資格からもわかるとおり、在野のエコノミスト(もちろん、近経の)で、結構まともなことを言う場合が多い。先日のテーマが「ブラックマンデーから20年」というものだった。実際にダウンロードして聴いてもらうのが一番だが、要するになぜ株式市場はブラックマンデーというクラッシュに学ばないで、ほぼ10年おきに似たような危機を迎えているのかということだ。
彼はまず「10年たつと市場参加者が入れ替わる」と言うことを指摘する。ここで言う「市場参加者」とはもちろん一般投資家のことではない。いわゆる機関投資家、つまり大手生命保険会社、証券会社、銀行や大型のファンドなど株式市場の主要な担い手たち、わけても大口の金の運用を任されてるトレーダーたちを念頭に置いていると思う。ブラックマンデーを実際に経験した人間と、知識として知っている人間は違う。若いトレーダーたちは自分たちは昔のようなへまはしないと勝手に思いこんでいる。
そしてここからがおもしろかったのだが。市場参加者たちは「好景気はいつまでも続く、リスクは合理的に分散されているので大丈夫」と思いこむ。こうして最も高いリターンを期待されてるトレーダーたちは、積極的にリスク商品に手を出すようになる。こうして熱狂のうちに危機がやってくる。
もう一つ伊藤洋一氏が指摘していたのが、極めて秀逸だと思うが、こうした危機の時に中央銀行ができることは限られているということだ。たとえば現在のサブプライムローン問題で各国の中央銀行がやっていることは、市場に現金をじゃんじゃん供給することだ。しかしもともとから言えば、現在の危機は世の中に金があふれそれが投機的な動きをしていることに源がある。しかしだからといってバブル叩きを目的に金融引き締めをやれば、一気に市場は冷え切ってより大きな市場の暴落を招く。日本の「失われた十年」の教訓はここいらにある。
何となくむかしむかし聞いた古典的恐慌論を思い浮かべたが、私の感想はあたらずと言えども遠からずではないだろうか。