二重基準はみっともないということ

このところずっとポッドキャスティングアメリカのテレビニュースを聞くことが習慣になっている。日本のニュースのネタにはならなかったが、落盤事故で6名の炭坑夫が閉じこめられた事件は、亡くなった義父が炭坑につとめていて労災にあったことから人ごとではなく心配していたが、どうやら絶望らしいというはなしだ。
アメリカでもこの夏は異常気象で、40℃以上の熱暑と洪水、干ばつで大変な騒ぎになっているらしい。と、ここまではただの海外ネタ。
先日ブッシュの息子=史上もっとも人気のない大統領=がイラク戦争を擁護する演説をやっていた。何せ身内のはずの共和党の有力議員からも「クリスマスまでに撤退を開始しろ」と要求を突きつけられて、進退窮まった格好で、あらゆるいいわけを駆使しているのが現状。今度持ち出したのが「ベトナム戦争の教訓」というから聞いてみる価値はある。
ブッシュの息子はこういった。

アメリカがベトナムから手を引いたために「再教育キャンプ」が「キリングフィールド」がもたらされた
嘘こくんでない!!!米軍はベトナムから「手を引いた」のではなく、たたき出されたのだ。ベトナム戦争末期、米軍が解放戦線と北ベトナム正規軍に軍事的に敗退していったのは、当時国防長官だったマクナマラが回想録で率直に認めているところだ。また「再教育キャンプ」、「キリングフィールド」はカンボジアでの出来事であり、米軍のベトナム撤退とは何の関係もない。確かにアメリカはこの事件を反共宣伝に最大限利用したが、だからといって積極的にポルポトの蛮行を抑制したことは私の記憶が正しければ、一度としてないはず。
そもそもアメリカに「人権」を語る資格があるかきわめて疑問だ。たった今も、アフガン介入やイラク戦争で捕まえたアフガニスタン人やイラク人などを、「彼らはテロリストであって捕虜ではない」という勝手な理屈をつけて、何年にもわたって、軍事法廷も開かず、弁護士にも接見を許さず、毎日のように秘密監獄や米軍キャンプ内で拷問を加えているのはブッシュの息子が最高指揮者である米軍だ。
「キリングフィールド」を持ち出すならば、たったいま200万以上の市民が民族浄化の対象となって難民化しているスーダンにたいしてアメリカが何かをしたのかと問うべきだ。自分の都合で理屈付けをころころと変えるのを二重基準=ダブルスタンダードといってみっともないことこの上ない。そういえば「実名主義」なんていって、どんな微罪でも名前を公表することを社是としているはずのマスコミが、不思議なことに公務員に対しては匿名主義をとっているらしいのも、ずいぶんいい加減なものだと私は思うのだが。